災害・環境に関するイメージ

人工地震説は「陰謀論」なのか

「人工地震」という言葉は、メディア報道の影響もあって陰謀論的な文脈と結びつけて語られがちです。しかし、人為的に地震(人工地震)を発生させる技術や事例そのものは、公的機関の資料や学術研究によって確認されている事実です。ここでは、公表されている一次資料をもとに、人工地震がどのような形で実在してきたのかを整理します。

過去に行われた人工地震実験

国土交通省の委託を受けた独立行政法人・港湾空港技術研究所は、爆薬を用いた人工地震実験を実施したと発表しています。この実験は、液状化が滑走路や無線施設などの空港施設に及ぼす影響の把握や、液状化対策のコスト縮減方法の検討を目的としたもので、行政・大学・研究機関・民間企業など41機関が共同で参加しました。

出典:国土交通省 記者発表資料「人工地震実験について」

また、ダムの建設・貯水や地熱発電、鉱山での採掘といった人間の活動によって地震が誘発される「誘発地震(人為的地震)」という現象も、学術的に確立した研究分野です。ある調査では、こうした人為的な地震が過去150年間で世界728件確認されたと報告されており、インドのコイナダム(1967年、死者180人)のように大きな被害を伴った事例も記録されています。

参考:ナショナル ジオグラフィック日本版「人為的な地震は150年間で728件発生」

核実験も、人工的に地震波を発生させる代表的な例です。2017年9月、北朝鮮付近を震源とする地震波を気象庁が観測した際、「自然地震とは明らかに異なり、過去の核実験の波形と酷似している」との分析が示され、政府(首相官邸・内閣官房)からも同様の見解が発表されました。京都大学防災研究所も、この地震波形の解析結果を論文として公表しています。

出典:首相官邸「北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について」京都大学防災研究所年報 第62号

戦争・軍事と人工地震の関わり

人工地震を軍事目的に利用することについては、国際条約でも扱われています。「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約」(通称ENMOD条約)は1976年に国連総会で採択、1978年に発効し、日本も1982年に締結しました。この条約は、地震や津波を人為的に発生させる、あるいは台風の進路を変えるといった環境改変技術を、軍事的・敵対的な目的で利用することを明確に禁止しています。国際社会がこうした技術を安全保障上の懸念として認識し、条約という形で規制対象にしてきたこと自体は事実として確認できます。

参考:環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約(ENMOD条約)

1997年4月、当時の米国防長官ウィリアム・コーエン氏は、米ジョージア大学で開かれた会議の質疑応答の中で、「電磁波を用いて気候を変えたり、地震や火山を遠隔的に引き起こしたりする、いわゆるエコテロリズムに取り組んでいる者もいる」という趣旨の発言をしています。この発言は未来学者アルビン・トフラー氏が示した将来のテロリズム像を紹介する文脈でなされたもので、そうした技術が実際に兵器として運用された事実を認めたものではありませんが、米国防長官という公的な立場の人物が公の場でこのテーマに言及した記録として残っています。

出典:米国防総省 公式記者会見トランスクリプト(1997年4月28日)

災害報道の受け止め方

このように、人工的に地震を発生させる技術や事例そのものは事実として存在します。ただし、特定の自然災害が人為的に引き起こされたと断定できる公的な証拠は、現時点では確認されていません。専門家の間でも見解が分かれており、断定的な結論は出ていないのが実情です。

災害報道や公的発表の内容について、統計データとの違いを指摘する声もあります。情報を鵜呑みにせず、公的機関の一次資料や複数の情報源を確認しながら判断することが大切だと考えられます。